三橋サンブリッジはどんな会社?を確立させる~プロジェクトメンバーへの宿題から導くコンセプトワード

きっかけは、三橋サンブリッジ(株)様(以下MSB、敬称略)からのウェブサイトリニューアルのご依頼でした。その目的は単なる集客ではなく、長期経営計画において持続的成長を成し遂げる道筋を早期に確立すべきだという社長の考えによるものでした。
しかし本当にウェブサイトのリニューアルでその目的が達成されるのか。SKGからご提案したのは、社員による社員自身のブランド確立でした。社員全員が自分たちのことを一言で言い表せるようなコンセプトワードの制作、そしてそれを伝えるツールとしてブランドムービーが最適であると考え、公開まで1年をかけて推進したプロジェクトとなりました。

[ ポイント ]

  • ウェブサイトをリニューアルしたい → 社員自身のブランドを確立させ、それを伝えるものにする

◎リサーチ

まずSKGがMSBの事業を知ることからスタートしました。仮にBtoCの商品やサービスであれば、それらがどういうものか想像つきやすいと思います。MSBの事業はBtoBであり、かつ取り扱っている製品群がニッチであることは前もって伺っておりました。
実際に工場へ伺い、見学に来られるお客様と同じように、我々も一通り案内していただきました。なんとなくすごさは伝わってくるものの、他社と比べてどうなのかまではこの段階でははっきりと分かりませんでした。

プロジェクトの進め方としてご提案差し上げたのが、社内からも何人か選出していただき、我々と一緒に今回のプロジェクトに取り組むという方法でした。これには2つの狙いがあります。まずは、MSBのことを深く知ること。社員の方々と一緒に取り組むことで、素のMSBが見えてくると考えました。そしてもう一つの狙いは、生み出したブランドを社員1人1人に浸透させることです。社長や経営陣から押し付けられるブランドではなく、自分たちで生み出したものの方が自然と納得できる内容になると考えたからです。
社長や工場長をはじめとする数人をプロジェクトメンバーとして選出していただき、その方たちに宿題を出すという方式でプロジェクトは進んでいきました。

取り組んで頂いた宿題。これはその回答を聞きながらメモした書類。

宿題1:ブランドの強みを探る
宿題2:強調したい方向性・サービス
宿題3:競合他社とその強み
宿題4:業界の推移、流行
宿題5:御社の弱み
宿題6:他業界で、ブランドとしてやりたい方向性に類似したサービス

宿題をお出ししつつ、仮説を立てながらSKGでも同じ宿題に取り組みます。
仮説1:ウェブサイトの必要性は低いのでは?
(当時の)ウェブサイトは約15年程前に立ち上げたままだが、日々業務に追われている。つまり継続的に受注しており、ウェブでの集客に頼る必要はないはず
仮説2:ウェブサイトからの集客で遠方・海外からの受注が殺到した場合、対応できるのだろうか

◎プラン 自分たちのことを一言で言い表す

伝えやすく、伝わりやすいキーワードをつくる。これを目標に設定しました。
それは自分たちの強みを表し、他と差異化できており、そしてミームとなった際にも正しく伝わりうる言葉である必要があります。
宿題への回答は、月一回の会議で各自発表していただきます。
答えを事前に擦り合わせることなく自分で回答していただき、その場でSKGが質問し、他のメンバーも疑問や意見があればぶつけ合います。この宿題と発表を2回程行い、SKGが持ち帰りました。これをもとに、プランからコンセプトへ結びつけていきます。

◎コンセプト

「手技能士集団(てぎのうし しゅうだん)」

MSBの業務は「手を尽くす」「手伝う」「手厚くもてなす」など、「手」を使った言葉で表現できること。大量生産によらない「手」を使った彼らの細やかな仕事ぶり。これらから、単に技能士の集まりというだけではない、自分たちだけの価値を見出すことができるとして、「手技能士集団」という言葉を導き出しました。

提案した資料。「手技能士集団」のコピーと共にそれを補足するブランドスローガンも書いている。提案の段階ではこのキーワードを商標登録まで考慮してレジスターマークがついたイメージとして提案。申請後、結果的に「“技能士”は職業能力促進法第50条第4項の規定により、技能士でないものは、技能士という名称を用いてはならない旨が定められている。」とのことから意見書を出すことなく断念。しかし使い続けることで真似されにくい事実ができるので、キーワードを変更することはしない決断に。

◎デザイン

ご依頼の段階で「ウェブは作らないかもしれません」と先に話していました。 お客様の「本当の助け」となることを考えると、ご依頼内容よりもっと本質的に解決すべき課題に気づくことがあります。
今回その本質は、どこまでも正しくMSBの価値や魅力を伝えることであると考え、メインの制作物をブランドムービーに。このブランドムービーをiPadなどに入れていただき、営業ツールとして使ってもらいます。またこれを見てもらうプラットフォームがあった方がいいので、ウェブも結果的にリニューアルしました。
コンセプトワードが決まり、(株)bird and insectの代表、shuntaro氏を連れて再度MSBへ。bird and insectには写真と映像を担当していただきます。

再び工場を案内していただき、理解も深まる。写真:bird and insect

MSBでは再び、通常お客様を案内するように工場を案内していただきました。いつも通りの案内ですが、案内中社員の見てもらいたいポイントは自然と「手」に絡めた説明に内容がアップデートされており、「手技能士集団」というコンセプトワードが社員1人1人に受け入れられ、彼らの姿勢にも影響を与えていることを実感しました。

これまでの課題解決の過程・結果やコンセプトワードをshuntaro氏にも共有し、理解していただきました。 その上で、bird and insectからは美しく整理整頓された工場に感動した初期衝動をベースに、「手だけでなく、手を見つめる『目』を撮りたい」と企画をもらい、撮影へ臨みました。技術や顧客に対する真摯な姿勢、整理整頓された空間、風土や立地、ブランドカラーの意味などが伝わり、工場へ行ってみたくなるブランドムービーになったと考えています。
動画 >>

撮影風景 写真:bird and insect

おまけ

撮影日の夜、SKGクルーは知らなかったのですが、MSBは年に一度の謝恩会を設けておられました。ホテルの宴会場を貸し切ってビンゴゲームなども行われる社員全員参加の催しです。
撮影は、通常業務の邪魔にならぬよう心がけ、演出することなく普段通りの姿を撮っておりましたが、ちょこちょこ外部の者が動いていて業務への集中を邪魔していたかもしれません。そのお詫びと撮影させていただいた御礼に、急遽謝恩会でその日撮ったばかりの静止画をスライドショーでサプライズ披露することに。すると社員の皆様は釘付け!「普段の仕事場や姿勢がこんなにも違って見えるのか」と感動し盛り上がっていただきました。みなさんの士気が上がったことを肌で感じた瞬間でした。

謝恩会での上映風景 写真:bird and insect

まとめ

業務・業界がニッチであれば競合は少なくなり、差異化のポイントを見つけるにはさほど時間を要さないかもしれません。しかしニッチであればあるほど、その業務は想像し難く、伝える言葉は説明がましくなったり、抽象的で的確さを失なったりしてしまいがちです。さらに長年一定して継続的な受注先がある企業は、必然的に仕事が入ってくる場合も多く、自分たちのやっていることを自ら伝えてまで仕事を獲得する機会が少ないと気づかされました。そのため自分たちで自分たち自身のことを言い表すのは難しく、第三者からの意見が重要となってきます。プロジェクトメンバー全員で導き出したコンセプトワードが、ブランドとしてだけでなく、事業戦略の方向づけにもなったと考えています。
その後、ブランドムービーとウェブを立ち上げてからの後日談を伺いました。相変わらず通常業務に追われる日々だそうですが、次年度の採用募集で新卒の応募がかなり増えたとのことでした。会社の情報や魅力が正しく伝わることで、採用にも大きな影響が出たことがうかがえます。

2019年2月21日

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