印刷にもいろんな手法があるって知ってますか?
ゲスト講師は、SKG代表の古巣でもあるグラフ(株)(以下GRAPH、敬称略)の営業さん。
本社を兵庫県加西市に置くGRAPHは、東京と京都にも拠点を持ち、印刷・加工を起点に特殊印刷を得意としながら、コミュニケーションデザインを始めとしたブランディングまで手がけるクリエイティブカンパニーです。
まずは、印刷の基礎知識
私たちが日常目にしているさまざまな印刷物。その印刷方法には、凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷、オンデマンド印刷など、実はいろんな種類があります。それぞれの特徴など印刷の基礎知識から、プロだけが知るマニアックな内容まで話していただきました。
デザイナーの間でも意外と知られてなかったのが「取り都合」だと言います。印刷機に通す紙の大きさから、いくつ仕上がりサイズが「取れ」るか、を表す言葉です。例えば、仕上がり寸法を1mm減らすだけで、効率よく取ることができロスを減らせる場合があります。
それによって見積もりが変わってくることもあるそうで、驚きました。
色々な話の中から、特に会場で盛り上がったものを挙げていきます。
インキにもいろいろ種類がある
特殊なインキでUVインキというものがあります。よく使われる油性インキに比べ1.5~2倍の価格とお高いのですが、用紙にインキが浸透する前にUVランプを照射してインキを硬化させるため、比較的、色が沈みにくく、油性インキよりもインキの膜厚を出すことができるので、2度刷り3度刷りといった重ね刷りによって質感を硬質化できるといった特徴があります。
線数を操る
印刷面1インチの中に何本線があるか(LPI = line per inch)を表す線数。この線数というものを知っていることで、表現の幅が広がる例を示していただきました。
後半はSKG代表のルーツについての話
京都工芸繊維大学の意匠コースでグラフィックデザインを専攻したSKG代表。
大学院を修了し、デザイナー募集のなかったGRAPHに入社。本社工場の製版部に配属されます。
工場や印刷機械を自主的に掃除していたことを認められ、デザイナーとして東京に転勤。
海外高級ブランドから印刷物が依頼される際、版下制作という作業もあわせてお願いされることがあります。例えば封筒の差出人情報部分のデータを差し替えるような作業ですが、そういった業務を数多くこなすうち、信頼され、そのブランドのデザインの仕事を任されるようになりました。
ある時、海外高級ブランドの販促ツールを担当します。細やかな印刷技術を駆使したデザインを展開し、高い評価を得ました。
しかし同時に疑問がわいてきます。
“印刷技術は使えば使うほど効果が高いわけではないのではないか。”
“ある一定値まで到達したら、伝わる力は変わらないのでは?過剰な加工は必要ないのではないだろうか?”
「伝えたいこと」がまずあって、それを助ける「印刷術」であるべきだと考えるようになったそうです。
「伝えたいデザイン」に「印刷術」を掛け合わせることによって「伝わるデザイン」となると話していました。
技術を背景に重ねてきた知見から、依頼内容にただ従うのではなく、何を伝えたいのか、デザインでできることは何か。これからも、さまざまな問いを投げかけクライアントとともにつくり上げる、SKGのデザインが生み出されていくことが楽しみです。
2019年2月27日
<ライタープロフィール>
藤田奈津子 メーカーサラリーマンを退職し、興味の赴くままにいろんな活動に参画。デザインはこうせん会事務局、Community Nurse Company 株式会社、認定NPO法人PIECESのPR/コミュニケーターを務める。