【EVENT】やっぱり印刷大好き! SKG公開社内研修 印刷物編 潜入レポート!

取材・文 藤田奈津子 / 監修 GRAPH

2018年秋、SKGにジョインした新規メンバーへの社内研修として行う印刷物のレクチャーを、なんと公開にて開催。
20名ほどのグラフィックやプロダクトデザインに関わる参加者が集まり、SKGやGRAPHがこれまで手がけてきた印刷物を並べ、それぞれの加工法や考え方をお聞きしました。

印刷にもいろんな手法があるって知ってますか?

ゲスト講師は、SKG代表の古巣でもあるグラフ(株)(以下GRAPH、敬称略)の営業さん。
本社を兵庫県加西市に置くGRAPHは、東京と京都にも拠点を持ち、印刷・加工を起点に特殊印刷を得意としながら、コミュニケーションデザインを始めとしたブランディングまで手がけるクリエイティブカンパニーです。

まずは、印刷の基礎知識

私たちが日常目にしているさまざまな印刷物。その印刷方法には、凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷、オンデマンド印刷など、実はいろんな種類があります。それぞれの特徴など印刷の基礎知識から、プロだけが知るマニアックな内容まで話していただきました。
デザイナーの間でも意外と知られてなかったのが「取り都合」だと言います。印刷機に通す紙の大きさから、いくつ仕上がりサイズが「取れ」るか、を表す言葉です。例えば、仕上がり寸法を1mm減らすだけで、効率よく取ることができロスを減らせる場合があります。
それによって見積もりが変わってくることもあるそうで、驚きました。

印刷の基礎知識を話すGRAPHの吉田野乃子さん。(イベント当時/現在は退職され新たなステージへ)

色々な話の中から、特に会場で盛り上がったものを挙げていきます。

インキにもいろいろ種類がある

特殊なインキでUVインキというものがあります。よく使われる油性インキに比べ1.5~2倍の価格とお高いのですが、用紙にインキが浸透する前にUVランプを照射してインキを硬化させるため、比較的、色が沈みにくく、油性インキよりもインキの膜厚を出すことができるので、2度刷り3度刷りといった重ね刷りによって質感を硬質化できるといった特徴があります。

SKG代表が学生時代おもしろいと思った箸袋。雑誌の一部に刷本そのものが綴じ込まれている。UVインキを使って印刷されており、それを制作したGRAPHへの憧れを抱くように。

線数を操る

印刷面1インチの中に何本線があるか(LPI = line per inch)を表す線数。この線数というものを知っていることで、表現の幅が広がる例を示していただきました。

GRAPHが作った20パターンの線数を印刷したカード。
見方のコツは、網点の重なり、掛け合わせの線の部分を見ること。線数が高く網点が小さいとなめらかに見える。
ルーペで美術品の細部を見る、というコンセプトでデザインしたSKG仕事。普通ルーペで覗くと網点が見えるが、この場合は線数を上げることで、ルーペで覗いてもきれいに作品を見ることができる。(写真:北原一宏)
作品 >>
無造作に貼られた印刷物をじっくりと
言葉の重みを表現した冊子つくりを手にとって感じる
話を聞き、これまでと違った視点で印刷物を見る
様々な質問に答えるGRAPHの若狭健さん

後半はSKG代表のルーツについての話

京都工芸繊維大学の意匠コースでグラフィックデザインを専攻したSKG代表。
大学院を修了し、デザイナー募集のなかったGRAPHに入社。本社工場の製版部に配属されます。
工場や印刷機械を自主的に掃除していたことを認められ、デザイナーとして東京に転勤。
海外高級ブランドから印刷物が依頼される際、版下制作という作業もあわせてお願いされることがあります。例えば封筒の差出人情報部分のデータを差し替えるような作業ですが、そういった業務を数多くこなすうち、信頼され、そのブランドのデザインの仕事を任されるようになりました。
ある時、海外高級ブランドの販促ツールを担当します。細やかな印刷技術を駆使したデザインを展開し、高い評価を得ました。

しかし同時に疑問がわいてきます。
“印刷技術は使えば使うほど効果が高いわけではないのではないか。”
“ある一定値まで到達したら、伝わる力は変わらないのでは?過剰な加工は必要ないのではないだろうか?”
「伝えたいこと」がまずあって、それを助ける「印刷術」であるべきだと考えるようになったそうです。
「伝えたいデザイン」に「印刷術」を掛け合わせることによって「伝わるデザイン」となると話していました。

技術を背景に重ねてきた知見から、依頼内容にただ従うのではなく、何を伝えたいのか、デザインでできることは何か。これからも、さまざまな問いを投げかけクライアントとともにつくり上げる、SKGのデザインが生み出されていくことが楽しみです。

活版印刷で製作した名刺。本来インクを乗せて印刷するところを、インクを乗せずカラ押ししたものも製作。 100枚に数枚の割合でカラ押しの名刺を混ぜ込んでおくことで、名刺交換時に真っ白な名刺が渡されるというハプニングが起き、新たなコミュニケーションが発生することを狙っている。
海外製の自転車パーツを扱う輸入代理店の仕事。海外で作られたパッケージに取り付ける日本語POPを制作するにあたり、ブランドイメージを壊さないよう、パッケージからはみ出す形のPOPを提案。その実現のために特殊な糊付けができるキルフィルム加工を採用。
スーパーのプライベートブランド商品のパッケージ。高級ラインのパッケージは、色数を減らしニスを入れることで高級感を演出。デイリーラインのパッケージと同じインク数になり、印刷コストを変えずに印象の差異化を実現している。(写真:北原一宏)
作品 >>
創業者のメッセージを伝える冊子を制作。情報量としてはA4サイズ1枚に収まる内容であったが、創業者の思いが伝わるツールを目指した。言葉の重みがより伝わるよう、あえて文庫本サイズにしページを増やすことで冊子自体を重くしただけでなく、量感の出る擬似的な上製本形式をとっている。(写真:北原一宏)
作品 >>

2019年2月27日

<ライタープロフィール>
藤田奈津子 メーカーサラリーマンを退職し、興味の赴くままにいろんな活動に参画。デザインはこうせん会事務局、Community Nurse Company 株式会社、認定NPO法人PIECESのPR/コミュニケーターを務める。